教職員ネットワーク

トップページ > 教職員ネットワーク > 「現代の起点 第一次世界大戦」 トークイベント+読書カフェを開催

「現代の起点 第一次世界大戦」 トークイベント+読書カフェを開催

写真  10月23日(木)午後6時半、京大生協ルネショップ・イベントスペースにおいて、京都大学人文科学研究所の先生方による「トークイベント+読書カフェ」(主催:京大生協/生協京滋・奈良ブロック)が開催され約50名の学生・市民が参加しました。

 2014年は第一次世界大戦勃発100周年にあたりますが、京都大学人文科学研究所の7年間の共同研究の成果として岩波書店から刊行された「現代の起点第一次世界大戦」(全4巻)をテーマにしてトークイベントが開催されたものです。今回、編者4名のうち人文研所長の山室信一先生、小関隆先生、藤原辰史先生にご登場いただきました。

 冒頭、司会役の藤原先生から、研究のキーワード、「世界性」「総体性」「持続性」の視点での研究概要について述べられるとともに、「レクチャー第一次世界大戦を考える」(人文書院・12巻)を紹介されました。「総体性」に関して、「総力戦」においては兵士だけでなく敵国の非戦闘員の弱体化がはかられるなかで、女性と子供が「食」確保など家族を守るという役割発揮が求められたということです。

 小関先生は、第一次世界大戦研究の目的について書籍のタイトルである「現代の起点」に尽きること、第一次大戦といえば米騒動、ロシア革命、サラエボといった言葉しか出てこないが、戦争下の民間人大量殺戮は第一次大戦に起源があると述べられました。
また「持続性」について、第一次大戦は1918年に決して終わっていない、チャーチルが語った『巨人の戦争が終わって、小人の戦争が始まった』ように、以降20~30年戦争が進行していったこと、「野蛮化し、元には戻れない」という意識が顕在化したのではないかと述べられました。

 山室先生は、大戦が石油重視のエネルギー革命につながったこと、生活だけでなく精神性まで変化していったこと、日本で20年代の大正デモクラシー高揚のあと、なぜ30年代に戦争につきすすんだのかについて社会の根底の変化を見る必要があると指摘されました。また1917年に理化学研究所創設、1919年の東大の経済学部設置も「総力戦」遂行のためであったとのことです。
「世界性」にかかわって、「総力戦」「総動員体制」という言葉を、日露戦争を体験した日本人がはじめて使ったが、「世界大戦」の言葉を1914年に使ったのも日本が当時の米、独など欧米との国際関係を客観的に認識していたからとのことです。
「感性」に関しては、戦争で「あらゆるものを失った」という実感の中で、生活様式が変化し「モダン」が生まれ、従来のエリート文化でなくジャズや映画・レコードなど複製芸術を文化生活と捉えるなど、感性の変化をもたらしました。

 今後の課題として、小関先生は、4巻の内容について結果的にヨーロッパ偏重になったことは否めないが、その後のデモクラシー、ナショナリズム、テクノロジー、モダニズムなど「現代の起点」は示し得たこと、そのうえで「現代とは何か」を追究したいとまとめられました。
山室先生は、4月から人文研で「現代世界とは何か」の研究を発足させるが、日本にとって「大戦」は1918年に終わったのではなくシベリア"戦争"などを経過して1925年まで続き、当時は日本の社会科学、人文科学の勃興期であった、それが完成しないままなぜ消えていったのかを明らかにしたいと述べられました。
藤原先生は、ドイツの毒ガス兵器が戦後アメリカの綿花栽培に農薬として活用されたり、アメリカのキャタピラ式トラクターが「戦車」として活用されるなど、科学技術が戦時には殺人、平時は民生に供される問題を指摘されました。
写真 写真 写真
読書カフェで「お薦め本」を披瀝―
 後半の読書カフェでは、読んでほしい本について先生方から紹介いただきました。

 藤原先生は、研究したいという背中を押してくれたフランツ・カフカの「変身」(岩波文庫ほか)を推薦されました。描写力が特異で身体的表現が大げさだがリアルなところに惹かれたそうです。また映画の分野ですが最近鑑賞されたベルギーのドキュメンタリー「聖人たちの食卓」を薦められました。インド・シーク教の黄金寺院に参拝する一日10万人の参拝者に、人種、国籍、身分を問わず600年前から振舞われているとのことです。

 小関先生は、一ツ橋大学時代の先生で、ドイツ思想史の良知力らちちから先生と日本史の安丸良夫先生の著作について、研究者になって以降に読んで凄いと実感され、お二人の著作なら何でも読んでほしい、また美術史の若桑みどりさんの「フィレンツェ」(講談社学術文庫)の新しい学問水準にふれてほしいと推薦されました。また70年代に観た映画「ライアンの娘」(デヴィッド・リーン監督)は第一次大戦時のアイルランドを舞台にしたものであり、研究活動との因縁を感じさせるものだと紹介されました。

 山室先生は、70年安保の年に入学した東大で、京極純一先生から『若いあなた方には政治学はわからない。人生を経てはじめてわかるものだ』といわれたことにふれつつ、埴谷雄高の「幻視のなかの政治」(未来社)と「ドストエフスキー その生涯と作品」(NHKブックス)を推薦されました。またご自身が再び読みたいものとしてハイデッガーの「存在と時」(岩波文庫)をあげられ、「存在」と「時間」の間に浮かび上がる「空間」をどう捉えるかが人文社会科学において最大に重要なことであると述べられました。
(大学生協 京滋・奈良ブロック事務局/芝田)