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「西田利貞とマハレの野生チンパンジー」 トークイベント+読書カフェを開催

写真  11月4日(水)午後6時30分から京大生協ルネ・ショップのイベントコーナーで、「西田利貞とマハレの野生チンパンジー」が開催され約40名の教職員、学生らが参加しました。

 1965年、当時博士課程の院生であった京都大学の西田利貞先生はアフリカ・タンザニア、タンガニィカ湖畔のマハレ山塊で野生チンパンジーの長期研究を開始され今年で50年が経過しました。西田先生は2011年、70歳で逝去されましたが研究は後輩たちに引き継がれています。

 最初に登壇された京都大学野性動物研究センターの中村美知夫先生から、研究の経過とあわせてその時々の刊行物について説明がありました。京都大学が2014年に発行した資料では、1949年から2013年までに66名の京大の研究者が栄誉ある賞を受賞しており(最初の一人は湯川秀樹博士のノーベル賞)、西田先生は2008年、「人類学のノーベル賞」といわれるルイス・リーキー賞を日本人ではじめて受賞されました。
日本の霊長類研究の先駆けである今西錦司さんが、「生物の世界」という本のなかで、『動物の社会』という考え方をはじめて打ち出しました。モンゴル遊牧民が数百頭の馬を識別できることに注目していた今西さんは、敗戦直後で研究費もない1948年、宮崎県で半野生馬の研究をしていたところ偶然ニホンザルの群れに遭遇、その後幸島こうじまでの研究が開始されました。これが1961年に始まる「京大アフリカ類人猿学術調査隊」につながっていきました。

 当初、人間に近い類人猿としてゴリラが研究対象でした。樹上での活動が多いチンパンジーと比べゴリラは地上での餌付けが容易だったこと、また当時は両者の違いが十分わからなかったこともあります。しかし1960年のコンゴでの政治的混乱を契機にタンザニアでのチンパンジー調査にシフトされました。
当時現地で指導に当たった伊谷純一郎先生がヒトのサバンナへの進出との関連に関心を持たれたのも理由のひとつといわれています。
75年から80年にかけてJICAプロジェクトが開始され、西田先生ら若手研究者が参加しました。現在ではひろく研究されている『社会生物学』がこのころ確立しました。1985年にはこれら日本の協力によってはじめてマハレ山塊国立公園ができました。99年にはネイチャー誌に「チンパンジー文化」が紹介され、以降チンパンジー文化研究が盛んになっていったということです。こうして長年の調査研究を通して様々な著作が出版されていきました。
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写真  中村先生は、『人間にとって50年は短いが、チンパンジーは14歳でやっと大人の入口段階であり、50年間の調査によってようやくチンパンジーの個体履歴が解明され、「家系」が掌握された。これからの50年間の研究活動に期待してほしい』と述べられました。

プログラム後半は京都大学アフリカ地域研究資料センターの座馬(ざんま)耕一郎さんから動画を使いながらマハレでの西田先生らの研究活動を紹介いただきました。

 研究エリアは標高約2400mのマハレ山塊の麓にあり、標高770mにタンガニィカ湖につながる川の水も飲料として使えるとのことです。アフリカといえば「暑さ」が連想されますが、この地の降水量は京都より少し多い年間1,751mm、また9月の最高気温は28.9度、最低温度は18.4度と、京都の9~10月の気候に相当するなど意外に「快適」といえる環境だそうです。ある日、『周りの雰囲気は日本の屋久島に似ていますね』といったところ、西田先生が『よく似てるね。行ったことはないけれど』と受け答えされるなど先生のお茶目な一面を紹介されていました。

 これまでの長期にわたる研究を通して、道具を使ってのオオアリ釣り行動、母親猿を亡くした孤児チンパンジーの養子取り行動、相手と頭上に伸ばした片手を互いに組みながら毛づくろいする「対角毛づくろい」行動など数々の「チンパンジー文化」の発見がなされてきたとのことです。西田先生はチンパンジーが見慣れない行動をするたびにその動きをビデオに記録されていたとのことです。

 突然のクイズで、座馬先生が名前のついた6頭のチンパンジーの顔写真をスライドで見せたあと、それぞれの名前がどのチンパンジーか、という問いに参加者の多くが判別に戸惑っていました。 西田利貞先生を中心としたこれまでの研究成果をとおして、チンパンジーを含む野生動物研究の「これからの50年」の飛躍が期待されます。

 なお報告のあと4名の参加者から、チンパンジーの「薬草」の摂取行動、水飲み行動、野生行動と環境の影響の関係などについて活発に質問が出されていました。
(文責 京滋・奈良ブロック事務局 芝田)